タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

カトリック VS 正教会

 5月6日のブログでは、ヨーロッパの歴史をおさらいし、カトリック VS 正教会の視点からロシアのウクライナ侵攻の背景を探った。今日は、キリスト教のこの2つの宗派の違いについて調べてみた。

 上表は、カトリック正教会の比較表である。このように比較すると、正教会の方がカトリックと比べて「人と神がより近い関係」、「政治と宗教がより近い関係」であることが分かる。そしてこれは、正教会側の国に独裁政権がより生まれ易いことを示している。
 モスクワ大公国のイヴァン3世は、1472年ビザンツ皇帝(東ローマ皇帝)を継承し、正教会の保護者と自認した。これが帝政ロシアの始まりである。1589年にはモスクワが大主教座から総主教座に昇格した。これはロシア正教会の成立を意味する。すなわちこの頃は、帝政ロシアの皇帝はロシア正教の保護者であり、神に近い存在だったわけである。21世紀の現代において、ロシア国民がプーチンをこのように見ているはずはないだろうが、プーチンは自分自身を「ロシアをかつての栄光の国に導く指導者」と思っている可能性は十分ある。正に、過去の栄光を追い求める姿である。
    
 上図は、ヨーロッパの宗教分布を示す。現在、プロテスタントカトリックが多数派の国々は、皆ほとんどロシアと敵対している。また、ウクライナにおいては、2018年10月、コンスタンティノープル総主教は、ウクライナ正教会ロシア正教会からの分離独立を認めた。これは、クリミア危機を巡るウクライナとロシアの対立を背景としている。これに対しロシアのプーチン政権はただちにコンスタンティノープル総主教に抗議し撤回を求めている。今回分かったことだが、ロシア正教のトップであるキリル総主教は、プーチンの庇護の下でプーチンのやっていることを肯定するのみであり、ウクライナとしては、こんな人を自国の宗教界のトップと認められるはずがないのである。一方でベラルーシは、ロシア正教会の総主教代理が代表するベラルーシ正教会の信者が多数派となっており、従って現在、ロシアに賛同する国(ロシアとあからさまに敵対しない国)はロシア正教の国であるロシアとベラルーシだけに事実上なっている。
 いやはや、「戦争の裏に宗教あり」である。

P.S.
 今日の戦勝記念日の演説で、プーチンウクライナ侵攻の正当性を強弁した。ニュースでは、ロシア国民の声も流れたが、ロシア正教を信じる国民が、ロシア正教会総主教も支持するプーチンの主張を信じてしまっているのは "仕方ないこと" と思わざるを得なかった。

ロシアの文豪トルストイは以下のように言っている。深い洞察力に感服するばかりである。
愛国心とは、その最も簡単明瞭で疑いのない意味では、支配者にとっては、権力欲からくる貪欲な目的を達成する道具にほかならない。
また、支配されている国民にとっては、人間の尊厳や理性、良心を捨ててしまうことであり、権力者への奴隷的服従にほかならない。
愛国心とは、奴隷根性である。…』