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田舎の年金暮らしのたわごと

受精における植物の進化

今日のテーマは受精における植物の進化である。
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 上図は、植物の陸上進出に伴い、動物も陸上へ進出したことを示している。2/3のブログで、『有羊膜類は完全陸棲への進化の過程で生まれた。胚(胎児)は水中でないと育たない。水中で産卵する魚類と両生類は問題ないが、有羊膜類(爬虫類、鳥類、哺乳類)は陸で繁殖するので、羊水を満たした羊膜で水中環境を自前で作って、その中で胚が育つように進化した。』と書いた。すなわち、動物の陸上進出において、受精および胚の発生においての水中環境構築が進化の分岐点となったわけである。
 これと同じことが植物でも言えると思われる。植物の祖先が生まれた頃の受精は水中で行われていたので、陸上へ進出時も受精は水のある環境で行われていたはずである。
 実際、4/7のブログでは『シダ類の受精は、前葉体の造精器で作られた精子は、前葉体の表面が雨で濡れた状態になると、前葉体中央に向かって泳ぎ出し、造卵器で作られた卵子と結合して受精卵となる』と書いた。精子が泳げる環境(水中環境)が無いと受精できないのである。
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 上図は、昨年3/6のブログでイチョウ裸子植物)の受粉と受精について説明する時使用した図である。イチョウでは、胚珠に花粉が付くと、花粉は花粉管を成長させ、その中で作られた精子が花粉管を出て液中を泳ぎ回り卵細胞に到達し受精する。裸子植物においても精子が泳げる環境が必要で、裸子植物はこの環境を自ら作って受精している。さて、シダ類、裸子植物と進化して、最終の被子植物の受精はどのようになったのであろうか?
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 上図は被子植物の花の構造と受精の仕方を示している。被子植物裸子植物と違って胚珠が子房で覆われており、花粉がめしべの柱頭に付くと、花粉は花粉管を伸ばし、花粉管が卵細胞まで到達すると、花粉管の先端が破れ、中から精子が出て来て卵細胞と結合し受精が完了する。f:id:TatsuyaYokohori:20220411222049p:plain
 上図は被子植物の受精における、雌性配偶体形成と重複受精を示している。めしべの中の卵細胞は、減数分裂にてゲノムを2nからnへと半減させ、その後3回の核分裂にて8核となった後、細胞化して中央細胞卵細胞、2つの助細胞、3つの反足細胞を形成する。その後中央細胞の中の2つの極核は融合して二次核となる。
 1本の花粉管により輸送される2つの精細胞のうち,一方は卵細胞と受精してを,もう一方はとなりの中央細胞と受精して胚乳を形成する。被子植物においては、この2つの受精が行われるが、これを重複受精と呼ぶ。は成長して植物体となり、胚乳は成長する際に必要な栄養分になる。
 以下、進化の観点から被子植物の特徴を説明する。裸子植物は風により花粉を大量に飛ばすことで受粉しているが、被子植物は虫に花粉を運んでもらうように進化した。受精が効率的になった。また、子房の中の助細胞は、受粉時に花粉管が伸びるのを誘引し、卵細胞まで到達した際、花粉管の先端を破り精細胞を取り込む。受精が成功すれば新たな花粉管の誘引が止められ、受精に失敗すれば2つある別の方の助細胞が花粉管を再度誘引する。このようにして、受精が確実に行われるように進化した。また、胚乳を形成することで、発芽および幼生期の栄養を用意して子孫が確実に成長するよう進化した。
 シダ植物や裸子植物が栄えた中生代は恐竜が繁栄したが、その後生まれた被子植物が恐竜の繁栄にブレーキを掛け、この被子植物の拡散に伴い昆虫類と哺乳類が繁栄の道を歩み始めたように思える。そして我々人類は、現在米や小麦などを主食としているが、これは被子植物の種子の中で大部分を占める胚乳を食べていることになる。正に被子植物 ”さまさま" である。