タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

筋肉痛はどのようにして痛いと感じられるのか?

 今日は、筋肉痛や痛風を脳がどのようにして痛いと感じるかについて調べてみた。中学校の理科では、『皮膚には「痛点」があり、これを刺激すると痛いと感じる』と習った。ただこの知識からは、痛点を持たない筋肉がなぜ痛いのかの答えは出て来ない。
 まずは、痛風を発症した際もらった薬を調べたら、「ジブロフェナックNa:痛みや炎症を抑えたり熱を下げたりする薬」と書いてあった。そこでジブロフェナックをネットで調べたら、以下の説明があった。
『ジブロフェナック:炎症や痛み、発熱の原因とされるプロスタグランジという生体内の物質ができる量を減らすことにより、炎症や腫れ、筋肉や関節の痛みを軽くし、発熱がある場合は熱を下げる』
 ここまでの調査でプロスタグランジという痛みのキーとなる物質を見つけ出すことができた。そしてこのキーとなる物質を手掛かりに、痛みを感じる仕組みを調べた。以下に調査結果を示す。
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 上図は、筋肉に損傷があった時の様子を示している。この図の右端で痛み物質であるプロスタグランジが登場する。プロスタグランジンは局所炎症に伴い産生され、血管透過性亢進や疼痛を引き起こす。すなわちこの物質の目的は、血管を拡張して、損傷細胞修復や異物排除のための蛋白質が血管壁を通過できるようにすること、および痛みを引き起こして、患部が安静に保てるようにすることである。
 痛風は、結晶化した尿酸が剥がれ落ちて、それを異物と見なした白血球がこのプロスタグランジンを撒き散らすことで起きる。この物質による血管透過性亢進で患部が腫れあがることになる。次に、この物質がどのように痛みを引き起こすかを説明する。
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 上図は、炎症時に産生される物質がどんな受容体で感知されるかを示している。炎症に伴って細胞膜から切り出されたアラキドン酸から、プロスタグランジン合成酵素(COX)により5種類のプロスタノイド(PGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、TXA2)が合成される。この中で炎症時の発熱や痛みに中心的な役割をするのがプロスタグランジンE2PGE2)である(赤枠内)。このPGE2の受容体となるのがEP1EP4の4種類のEP受容体である。EP受容体は、3/5ブログ「味覚センサ」で示したGタンパク質共役型受容体であり、この受容体に結合した痛み物質(PGE2)が引き起こした電気信号が、味覚知覚と同じように神経細胞を介して脳まで伝達され「痛い」と感じることになる。

P.S.
アスピリンは1900年にドイツのバイエル社より発売された薬であり、以来、鎮痛・解熱剤として長く使い続けられている。発売当時の商品名が現在世界中で通用し、日本薬局方名にもなっている。この当時、この薬の効能の仕組みは解明されていなかったが、この分野は最近、遺伝子解析やその遺伝子が産み出す蛋白質の振る舞いの解析を通じて、急速に明らかになってきているようである。