タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

味覚センサ

 一昨日は「味覚」を話題にしたが、今日のテーマは味覚センサである。味覚には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つがあり、五基本味と言われている。色覚では「光の3原色」と言われ、まるで光の特性のように言われるが、そうではない。光が3原色となるのは、ヒトの網膜に3種類の波長に対応する3種類の視細胞(色覚センサ)が有るからである。となると五基本味も、人間の舌には5種類の味覚センサが有り、それぞれのセンサがそれぞれの化学物質を感知するからだと想像される。
 最初、この味覚センサが、化学物質の幾何学的な構造を検知しているのかも知れないと思い、アミノ酸の構造とアミノ酸の味に何か関係がないか調べた。f:id:TatsuyaYokohori:20220305220729p:plain
 上図は蛋白質を構成する20種類のアミノ酸の構造とその味をまとめたものである。これを見ると、確かに似たような構造のアミノ酸は同じ味覚の分類に入るが、味覚センサについての手掛かりは掴めなかった。それで、「甘味」に絞って味覚センサの実像を調べてみた。f:id:TatsuyaYokohori:20220305221733p:plain
 上図は、甘味物質であるショ糖を味覚センサ(甘味受容体)がどう感知し、どう脳へ伝達しているかを示している。甘味受容体が甘味物質を捕らえると甘味細胞内のCaイオン濃度が上がり、するとTRPM5チャネルが活性化し、それが、電位依存性ナトリウムチャネル(SCNs)を介した活動電位を発生させ、このように興奮した甘味細胞がCALHM1チャネルから神経伝達物質であるATPを放出する。
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 上図は、「甘味」と「うま味」と「苦味」が2種類のGタンパク質共役受容体(GPCR)であるT1rT2rにより知覚されていることを示している。また、「酸味」の受容体はOTOP1というタンパク質であることが2019年に解明され、「塩味」の受容体がENaCというタンパク質であることが2020年に解明された。

 今日は、五基本味が5種類のセンサにより知覚されていることが分かった。また味覚の仕組みが分子レベルで解明されたのが、意外と最近であることが分かった。各受容体の蛋白質を作り出す遺伝子は現在も変異を続けているので、ヒトの味覚も進化し次第に変わっていくのであろうか?