タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

眼のレンズの進化

 今日も一昨日から引き続き眼の進化を考察する。
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 上図は単純なものから複雑なものまで、眼の構造・構成要素が分かるように整理した図である。眼の構成要素は脳神経系と表皮系に分けられる。昨日は脳神経系の代表格、網膜の進化が産み出す色覚の進化についてまとめた。今日はもう一方の表皮系の代表格、レンズの進化について調べた。
 脊椎動物は上図)で示す複雑な構造の眼を持っている。進化のポイントの一つとして、可動型のレンズを持ち、遠くから近くまで焦点を合わせて網膜に鮮明な像を投射できることがあげられる。
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 上図はヒトと魚類の眼の構造を示す。ヒトに対し魚類は、より球形に近いレンズ(水晶体)を有している。この違いは陸棲か水棲かで生まれる。光の屈折率は空気中と水中で大きく異なる。ヒトの場合、空気中から角膜に入射した光は、両者の屈折率の大きな違いから大きく屈折し、水晶体で多少の屈折調整して網膜に像を結ぶことができる。一方で魚類の場合は、水中から角膜へ入射した光は、両者の屈折率がほぼ等しいため大きく屈折しない。このため、水晶体を球形にして屈折率を稼がないと、網膜に像を結べない。
 空気中と水中の屈折率の違いは水晶体の可動方法にも現れる。ヒトの場合は水晶体の厚みを変化させることで焦点距離を微調整するが、魚類の場合は、水晶体を網膜へ近づけることで焦点距離を調整する。
 次に、レンズの物質から、進化の様子を探ってみた。動物の眼のレンズはクリスタリンと呼ばれる構造タンパク質で作られている。クリスタリンはいくつかの成分から構成されている:すべての脊椎動物は、αー、βー、γークリスタリンと呼ばれる3つのクリスタリンを持つ。これらの主要成分の他に種特異的なクリスタリンがある。例えば、鳥類と爬虫類だけで知られているδ−クリスタリン、ワニと多くの鳥類が持つε−クリスタリン、ある種の魚類、爬虫類、鳥類、及びヤツメウナギのτ−クリスタリンなどがある。何と驚いたことに、これらのクリスタリンは元々酵素として働いていた。f:id:TatsuyaYokohori:20220302222223p:plain
 タンパク質には、髪や筋肉など、組織の構造体の構成物質である構造蛋白質と、生体内の化学反応を触媒する酵素がある。レンズ構成物質であるクリスタリンは、酵素として働いていた蛋白質を、眼の構成物質としても使い回すように進化した形となっている。

 レンズの物質の話から、進化は以下のように進んでいると思えた。
『突然変異で新しい遺伝子が新しい蛋白質を作って進化が進むこともあるが、そんな新規性の高い遺伝子は太古の昔(古生代カンブリア紀)までにはほとんど揃っていた。その後の進化は、それらの既存の遺伝子のマイナーチェンジや、既存の蛋白質を別の用途で使うことにより進んだ』