タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

色覚の進化

 今日は眼の進化の続きとして、色覚の進化について調べてみた。
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 上図は脊椎動物への進化の過程で、魚類においてもう既に4色型色覚を獲得していたが、哺乳類においては青と緑の2色を失って2色型色覚となり、ヒトを含めて霊長類においては1色追加となり3色型色覚に進化したことを示している。
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 上図は眼と網膜の構造を示している。網膜は様々な種類の細胞にて構成されているが、この中で桿体細胞錐体細胞が光を検知し電気信号に変換する細胞である。桿体細胞は暗いところで物を見る際に働き、錐体細胞は明るいところで物を見る際に働く。色覚は、複数種類の錐体細胞がそれぞれの波長の光を吸収し電気信号に変換することで獲得できる能力である。ここで光を吸収する主役となるのが光受容蛋白質ロドプシン)であり、このロドプシンがどう変化したかは、進化の過程で色覚がどう変化したかを示す。
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 上図はロドプシンの構造と分子系統樹を示している。図中に示す113番目と181番目のアミノ酸が変化することで吸収する光の波長が変化する。そしてこれは、これらのアミノ酸が突然変異で他のアミノ酸に変わることで進化が進むことを示している。

 ヒト視物質遺伝子の解析によれば、L(赤)および M(緑)視物質遺伝子は相同性が高く、364 個のアミノ酸配列のうち 15 個のアミノ酸が違うだけである。L、M 視物質遺伝子はともに X 染色体上に L、M の順にタンデムに並んで配列している。これは、過去に遺伝子重複にてL視物質遺伝子が2つでき、その中の一つが突然変異にてM視物質遺伝子に変わったことを意味する。LとM、2つの視物質遺伝子が性染色体であるX染色体上にあるため、これらの遺伝子に異常がある場合は、男女で異なる色覚異常色盲)が発現する。女性はX染色体を2つ保持するため、例え一方の遺伝子に異常があっても他方の正常な遺伝子がカバーするため色盲にはならない。異常となるのは二つの遺伝子が共に異常な場合で、確率的には非常に小さな値である。一方で男性はX染色体を1つしか持たないため、遺伝子異常がそのまま色覚異常として発現する。

 今日は色覚の進化を分子レベル(遺伝子が翻訳するアミノ酸レベル)で考察でき、突然変異が進化のキーファクタであることを改めて確認できた。

P.S.
 今日の主題から外れるが、網膜の複雑な構造にはびっくりした。桿体細胞、錐体細胞(複数種)、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞と多種類有り、網膜の表面から底面に向かって重層構造になっている。こんな複雑なものがiPS細胞から作り上げることができるんであろうかと思い調べてみた。結果、以下のようであった。
『網膜は視細胞を含む感覚網膜(神経網膜)と網膜色素上皮(RPE)から構成される。iPS細胞が適用されるのはRPEの方であり、滲出型加齢黄斑変性で傷んだRPE細胞の置き換えとして、iPS細胞からの分化により作成したRPE細胞を移植する』