タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

おしっこの進化の歴史

 昨日、尿酸について調べていたところ、おしっこの進化について興味深いことが分かった。今日はその辺りを書いてみたい。
 私は尿酸値が高いため、医者から毎日2Lの水を飲むように言われている。そもそも、「人はなぜ毎日水を飲まなければならないのか?」と問われたら、答えは「体内の窒素代謝物をおしっこと一緒に体外へ排出するため」となる。体を構成する蛋白質核酸物質(DNA構成物質)には窒素が含まれており、これらを代謝する過程で有害なアンモニアが発生する。今日の話は、脊椎動物がこの窒素代謝物をどのように処理するように進化してきたかを扱う。
f:id:TatsuyaYokohori:20220203125159p:plain
 上図は脊椎動物の進化の系統樹に対し、窒素代謝物を添えて示してある。
 ①魚類はエラからアンモニアを排出する。(魚類はおしっこをしない)
 ②カエルはオタマジャクシの間はアンモニアを、変態後は陸棲となり尿素で排出する。変態時に尿素を排出するための尿、それを貯蔵する膀胱が出現する。
 ③爬虫類や鳥類は発生の初期にアンモニアから尿素、すぐに尿酸に切り換え、孵化まで尿酸を尿膜に貯める。孵化後は総排出口から固形の尿酸を排出する(ウンチと固体の尿酸が同じ排出口から排泄される。おしっこと呼べない)。
 ④哺乳類は尿素を排出することと膀胱を有することにおいて両生類と同じ。

 さて、以上の説明により、おしっこをするのは変態後の両生類と哺乳類だけと分かった。恐竜は 爬虫類・鳥類グループに入るので、おしっこをしなかったことになる。また、尿酸にて窒素排出していたことになるので、痛風に苦しむ恐竜がいたかも知れない。実際ネットには以下の記事があった。
 『シカゴのフィールド自然史博物館には、世界で最も有名と言われる「スー」と名付けられたティラノサウルスの化石があります。この「スー」の右手指の骨には、骨の一部が丸く溶けるという痛風の痕跡が認められています。原因は解明されていませんが、赤身肉などの高プリン食の摂取が原因と考えられています。』

 哺乳類と爬虫類・鳥類は、進化の道のりのどこで分かれたのであろうか? 爬虫類、鳥類、哺乳類、これらの3類をまとめて有羊膜類と呼ばれている。哺乳類は、この羊膜が母親の胎盤と接合し栄養分や老廃物をやり取りするように進化した。この胎生への進化が哺乳類 と 爬虫類・鳥類との分岐点となった。
f:id:TatsuyaYokohori:20220203130021p:plain
 羊膜類は完全陸棲への進化の過程で生まれた。両生類は幼生期は水棲であり半陸棲だったわけだが、羊膜類は完全陸棲へと進化したことになる。
 胚(胎児)は水中でないと育たない。水中で産卵する魚類と両生類は問題ないが、有羊膜類(爬虫類、鳥類、哺乳類)は陸で繁殖するので、羊水を満たした羊膜で水中環境を自前で作って、その中で胚が育つように進化した。
 爬虫類・鳥類においては卵の中に羊膜と尿膜があり、胚児(胚)が排出する老廃物は尿膜に溜まるようになっている。尿膜の容積は限られるため、爬虫類・鳥類は窒素代謝物を「尿酸」に変換しコンパクトに固形で排出できるよう進化した。
 一方で哺乳類は、両生類の進化の形である「尿素」と膀胱を採用しながら、胎生の形で胎児が羊膜の中へおしっこをする形へ進化した。

 今日の話の中では、哺乳類の窒素排出の形は「尿素」であり、昨日の話題の「尿酸」ではない。この辺りは次なる課題となる。