タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

薬はどこでどのようにウイルスに働くか?

 昨日と今日とで新型コロナウイルスに薬がどう作用するかを調べてみた。
1.薬の基本
 ・薬は人に害を与えてはいけない(副作用を極少にしなければならない)
 ・薬は病原体(細菌やウイルス)のみに作用する(病原体に選択的に作用する)
2.抗菌薬と抗ウイルス薬
 病原体は細菌とウイルスに分けられる。細菌由来の病気には「抗菌薬」、ウイルス由来の病気には「抗ウイルス薬」が用いられる。抗菌薬の中で有名なものにペニシリンがある。ペニシリン等の抗生物質は、細菌の細胞壁の合成を阻害する。ヒトの細胞には細胞壁が無いので、抗生物質は人には害を与えず細菌のみに選択的に働いて細菌増殖を抑える。ウイルスは細胞壁を持たないので、抗生物質はウイルスには効かない
3.新型コロナウイルス感染症に効く薬
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 上図はウイルスの増殖サイクルを表している。また赤字で薬の働く場所が3ヵ所示されている。現在世の中に出ている薬は、この働く場所により大きく3種類に分類される。
(1)中和抗体薬
 ・細胞に感染前のコロナウイルスのスパイク蛋白質に選択的に働きウイルスが細胞に感染するのを阻害する。
 ・オミクロン株はスパイク蛋白質に多数の変異が生じているので、中和抗体の有効性は低下する。
 ・薬品例:ソトロビマブ(英 グラクソ・スミスクライン(GSK)製)
  英GSKは、「ソトロビマブはオミクロン株に対しても、死亡や入院の割合を79%少なくした」と治験結果を発表し有効性が高いことを示した。
(2)RNAポリメラーゼ阻害薬

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 ・細胞内でウイルスがRNAを複製するのを阻害する
 ・RNA複製はRNAウイルスに特有の生化学反応であり、ヒトはRNAポリメラーゼ(RNA複製酵素)を有していない。この薬がRNAポリメラーゼに選択的に作用するならヒトには害を与えない。(注1)
 ・RNA複製酵素はウイルス間(インフルエンザウイルスとコロナウイルス間)でも共通性が高い(インフルエンザ治療薬がコロナウイルス用としても使える)。また阻害薬はスパイク蛋白質変異の影響を全く受けない(オミクロン株にも有効)。
 ・薬品例:
  -モルヌピラビル(米 メルク)入院や死亡を30%減少させる。特例承認された。
  -レムデシビル(米 ギリアド・サイエンシズ・インク)軽症使用許可(1/28)
  -アビガン(日 富士フィルム富山化学)アビガンは元々新型インフルエンザ治療薬として開発され承認された。新型コロナ用治験では統計的優位性無しの判定(2021/11)
 (注1)アビガンは動物実験で、初期胚(受精卵)の致死及び催奇形性が認められた。このためアビガンは妊娠初期の女性への投与は厳禁とされている。
(3)3CLプロテアーゼ阻害薬
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 ・プロテアーゼとは蛋白質分解酵素のこと
 ・ウイルスはヒトのリボソームに、複数の蛋白質を1本に繋げて作らせた後、自分用の蛋白質(パーツ)に切断する。コロナウイルスはこの切断用に酵素3CLプロテアーゼを使う。
 ・ヒトは3CLプロテアーゼを使った生命活動をしないので、この酵素の阻害薬がこの酵素だけに選択的に作用するなら、ヒトには影響を与えない。
 ・阻害薬はスパイク蛋白質の変異の影響を全く受けない(オミクロン株にも有効)。
 ・薬品例
  -パクスロビド(米 ファイザ)米英で緊急使用許可。入院・死亡リスク89%減
  -S217622(日 塩野義製薬)最終治験中