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オミクロン株 素顔の正体

 今日はオミクロン株の正体に迫りたい。世の中、オミクロン株はデルタ株と比べて「感染力が強い」とか「重症化する確率が低い」とか色々特徴が言われているが、これらは人間側の被害状況から間接的にウイルスの姿を想像しているだけであり、ウイルスの素顔が分かっているわけではない。大学で機械工学をかじった私は、最初に対象物の構造やメカニズムを理解し、その後その機能や性能を推量することを基本としている。そんなわけで、今日はオミクロン株の素顔を調べてみた。
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 上図は、理化学研究所がスーパーコンピュータ富嶽を用いて解析した新型コロナウイルス・スパイク蛋白質の構造とメカニズムである。スパイク蛋白質は3つのサブユニットで構成されていて、その中で、ACE2受容体に吸着する「RBD」とRBDの挙動をコントロールする「NTD」が感染機能を司る最重要サブユニットとなる。これはつまり、この2つのサブユニットが人間にとっての顔に相当し、本日の課題は、この顔がどんなものかを探ることになる。
 スパイク蛋白質はACE2受容体に吸着する前は、ダウン型とアップ型を行ったり来たりする平衡状態にあるが、ACE2受容体に吸着後はアップ型が安定的に持続し、細胞内へ侵入して感染に成功する。
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 上図は、RBDとNTDの感染時の挙動を示している。RBDとNTDは糖鎖により緩やかに固定されているが、RBDがACE2受容体に吸着するとこの糖鎖の一つが外れ別の糖鎖が接続位置を移動し、アップ型に移行したままその状態が維持される。そして感染に成功する。f:id:TatsuyaYokohori:20220126115809p:plain
 上図はスパイク蛋白質領域における各変異株の変異数と変異位置を示す(慶応大学医学部公表資料から抜粋)。最上段がワクチンから生成される「抗原蛋白質」を示し、新型コロナウイルスが出現した時の変異前の初期状態を示している。2段目と3段目はオミクロン株であるが、他の変異株に比べて変異が圧倒的に多いことが分かる。スパイク蛋白質は、抗体にとっては敵を判別する顔であり、武器を封じ込める重点部位となる。オミクロン株は、このウイルスの顔がそれまでの変異株と比べて大きく変わってしまった。

さてここからは、上述の構造とメカニズムを踏まえて「オミクロン株の特徴」を考察する。
1.オミクロン株の感染力は上がっているか?
 オミクロン株は感染拡大のスピードにおいてデルタ株より格段に上がっている。しかしながらこれは、オミクロン株の感染力が上がっていることを必ずしも意味しない。私はウイルスの再生産サイクルが短くなっていることが感染スピードアップに効いているだけであり、感染力(ACE2とRBDの結合し易さ)は変わっていないと考えている。例えば仮に、オミクロン株は体内で3日で100万倍に増えるがデルタ株は6日で100万倍になるとしよう。実際オミクロン株の潜伏期間はデルタ株の半分程度に短くなっている。そしてこれは(感染力が上がっていなくても)一人の人間がウイルスを外界へばらまくまでの期間が半分になっており、その結果、感染拡大が2倍の速さで進むことを示している。
2.オミクロン株ではウイルス再生産のスピードが何故上がるのか?
 この新型コロナウイルスは、デルタ株までは「隠密潜行型」で、ゆっくりと身体深部(肺)まで進行し重症化を引き起こすタイプのウイルスだった。それがオミクロン株では「電撃突破型」に変わり、上気道に侵入した時点で暴れまわり、人間にはそれなりの被害を与えるが、直ぐに免疫系に見つかってしまい軽症で終わるタイプに変わった。
 それでは、「隠密潜行型」と「電撃突破型」では、ウイルスの顔はどのように変わるのだろうか? ここからはあくまでも私の想像であり、エビデンスも文献もないことをご承知おき頂きたい。
 隠密という意味は免疫をすり抜ける能力と考えられる。ここでキーとなるのが図2に登場した糖鎖である。ウイルスにはサブユニット固定用の糖鎖以外にも、免疫逃避用の糖鎖が存在する。デルタ株の顔(RBD、NTDサブユニット)が多数の免疫逃避用の糖鎖で縄のれんが掛かったように覆われていたとしよう。一方でオミクロン株は、この縄のれんを取っ払ってしまったとしよう。縄のれんはACE2受容体に吸着する時は邪魔になり、結果ウイルス倍化のスピードを落とすことになる。反対に、この縄のれんを取っ払ったオミクロン株の倍化スピードは上がる。ところが、倍化スピードが上がると被害状況に気付いた免疫系が直ぐに働き出し、縄のれんという「免疫をすり抜ける武器」を失ったウイルスは早々に発見され抹殺されてしまうことになる。このようにしてオミクロン株は、ボクシングに喩えるなら「ノーガードで1ラウンドからパンチを打ちまくるボクサー」になったと言える。

 新型コロナウイルスは、オミクロン株に変異した時点で、このウイルスの一番の特徴だった隠密性(ステルス性)を失ってしまい、旧型コロナウイルスのようになってしまった。
 今日は自分なりの答えを見つけることができた。あくまでも個人の考えであり想像の域を出ないが、もし真相を突いているならうれしい限りである。