タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

バラマキのどこが悪い

 18才以下を対象とした現金10万円相当の給付金について、年収960万円の所得制限を付けることで決着した。このように決着することになった背景には「バラマキ批判」という世論動向があったように思える。このバラマキという言葉は否定的な意味に使われることが多いが、一体全体バラマキのどこが悪いのだろうか?
 だいたい、一律給付と言うものは、低所得層に厚く高所得層に薄くなる貧困層に極めて有利な優れた政策である。年収1000万円所得世帯に対する10万円が1%であるのに対し、年収100万円所得世帯に対する10万円は10%もの値打ちを意味する。こんな低所得層にお得となる政策はないはずなのに、日本国民は何を不満に思うのだろうか? 自分だけが恩恵を受けてはいけないとか、何でそんな優等生的思いになるのであろうか?
 私は、バラマキが悪いことだと思う心の裏には、節約・倹約を美とする日本人の貧乏人根性があると思っている。日本人は限られた資源の中で、それを効率的に生かす才能には長けている。しかしながら問題は、一旦「資源が限られている」と思ってしまうと、その限界を打ち破ろうとはせず、効率化ばかりに走ってしまう点である。
 ゼロ戦は1000馬力のエンジンで、車体重量を極限まで軽くして高い運動性能を実現した。そして日中戦争開始から太平洋戦争初期までは、敵軍機を圧倒し無敵の戦闘機として君臨した。これに対しアメリカは、出力2000馬力のエンジンを搭載したヘルキャットで対抗した。日本は優秀なパイロットを失った太平洋戦争中期以降で、ゼロ戦機も次第に劣勢な戦いを余儀なくされた。日本は物量でも負けたが、出力2倍のエンジン搭載機の飛行性能でも負けたと言える。
 今日本人は、国の借金が膨大(GDPの2倍超)であると喧伝された中で、借金がこれ以上増えないよう、例えコロナ対策と言えども、本当に困っている人に必要な分だけに現金配布を限定すべきと思っている人が大勢を占めている。これは、限られた資源の効率的使用ばかりに思考が限定されてしまう日本人の特質をよく表している。
 先に「貧乏人根性」と書いたが、貧乏人は節約ばかり考える。これでは明るい未来がなかなか見えて来ない。一方で本当の金持ちは、無駄遣いはしないで、使うべきところへはちゃんとお金を使う。また、会社経営の場面での経理担当と社長との対比で言えば、経理担当は経費削減を至上命題と考えるが、社長はどこに投資すべきかを考える。
 さて、現金給付を困窮者対策と見るか経済対策と見るか、この辺りをちゃんと説明しない点は岸田政権に改めて欲しいところだが、それ以上に懸念される点は、文芸春秋に「バラマキが続けばこの国は沈む」と出稿した矢野財務次官を罷免せず、むしろ重用するように見える点である。10/28ブログに書いたが、日本の財政は破綻しない。岸田政権は、今の財務省を、日本を負のスパイラルに導く出来の悪い経理担当者の集まりだと早く気付くべきである。メーカーの優秀な社長なら、研究開発投資を絞り込む会社はジリ貧になるだけで未来はないと直ぐに気付くはずであり、日本の政治家にも、こういう経営者的発想が必要だと強く思った次第である。