タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ミミズの思いとセミの思い

 家庭菜園をしている畑の方にはミミズが少ない。ミミズは土と一緒に枯れ草や落ち葉を食べ、体内で共生する微生物の助けを借りて消化し、毎日毎日自分の体重と同じくらいの糞を出す。この糞が植物にとっての食料となるので、ミミズが多い土ほど肥えた土壌となる。そして、このミミズが少ない我が家の小さな畑は、外部から投入する化学肥料と市販堆肥(牛糞、鶏糞)にて何とか維持できているものなので、今流行りの Sustainable からは外れている。
 一方で庭の方は、枯草は枯れたまま、落ち葉は落ちたままになっており、そういう中で雑草が伸び放題になっていて、雑草を引き抜くとミミズが顔を出す。つまり、こちらの方が肥えた土壌になっている。ただ肥えているのは地表から数cmであり、ここで野菜は作れない。
 ミミズは雌雄同体の動物で、一つの個体の中にオスとメスの生殖器を合わせ持つ。ただ植物のように自家受粉をするのではなく、必ず別の個体と交尾し互いの精子を交換し合う。交換し合った後は、双方の卵子と授精し双方とも卵を産む。
 ミミズは体節ごとに神経節が一対づつある。一対あるということは、右と左の差を感知できるということを意味する。そしてこれは、進行方向に左右を加えた2次元の世界をミミズは知覚できていることを意味する。
 ミミズの土中の思いは2次元の世界の中で展開される。進行方向に石があれば、それを避けるように行動する。進行方向に光を感じたなら、体表面が乾くと皮膚呼吸できなくなるので、地中の方へ戻らなければならない。しかしながら交尾は地上でしかできないので、太陽光が十分弱まった後、自分と同じような味と臭いを発する他者の這い回った後を、全身の皮膚で手探り腹探りしながら交尾相手を見つけることになる。
 一寸の虫にも五分の魂という。眼を持たないミミズに対し眼を持つ虫(昆虫)の知覚世界は2次元から3次元に広がるはずだ。土中から這い出たセミの幼虫の思いは、ミミズの交尾相手を見つける思いと同じはずだが、見えている世界は全然違うことになる。