ワクチン接種して免疫の有難さを思う

 本日、2回目の新型コロナワクチンを接種した。前回よりスムーズで、待ち時間ゼロ、受付から接種まで5分、接種後の待機時間15分を含めてトータル20分で全て完了した。接種後6時間経った今、発熱も倦怠感もなく、前回あった左腕の軽い痛みさえもなく、何かちょっともの足りない気がする。

 それにしても、免疫というものは誠に有難い仕組みである。世界で初めて抗体を発見したのは北里柴三郎であり、これにより血清療法が確立された。1889年のことでありノーベル賞級の偉業であったが、ノーベル賞が創設されたのはこの十数年後であった。しかも当時はまだまだ、科学技術分野に対する日本人の貢献が少なかったため、欧米諸国の日本人に対する認知度が低く、北崎の業績がノーベル賞の栄誉に輝くことはとうとうなかった。
 北里の時代は、まだ人類に害を及ぼす病原体もそんなに多く特定されていなかったが、それから90年ほど過ぎ、病原体が1万種類とも1億種類とも言われ始めると、これら全てに対して抗体を産生する仕組みが、GOD(Generation of diversity(多様性の発現))ミステリーと呼ばれるようになった。人の遺伝子は2万数千と考えられているが、この遺伝子を全て抗体作りに当てても、高々2万数千種類の抗体タンパクしか作れないわけで、それでどうして1億を超える病原体に対応できるかが正に謎だったわけだ。この難題を解明したのも日本人であり、利根川進博士はこの功績により、1987年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
 利根川博士が解明したこの仕組みは、「免疫B細胞が発生する過程で遺伝子が再編成される」という、これまでの常識からは思いも付かないからくりだった。

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 上図は遺伝子再編成の仕組みを示している。抗体産生に関係する遺伝子は、DNA上 大きく3つの領域(V、D、J)に分かれて存在する。造血幹細胞から免疫B細胞が分化する過程で、最初に、D領域の遺伝子断片の一つとJ領域の遺伝子断片の一つが再編成され、これに続いて次にV領域の遺伝子断片が付加される形で再編成される。このように再編成され出来上がる遺伝子の種類数は、3つの領域の中から一つを選択して組み合わせる数となる。上図は抗体の重鎖(Heavy Chain)を産生する場合を示しているが、軽鎖(Light Chain)を産生する場合も同様に遺伝子再編成が行われるため、このようにして生まれる免疫B細胞の遺伝子の種類数は1億を超えることになる。そして、このようにして生み出される遺伝子の多様性でもって、免疫システムは多様な病原体と戦っていることになる。
 解明された仕組みは、多様性を産み出す非常に巧妙な仕組みであり、進化の結果このような仕組みを獲得できたことは驚異的と言わざるを得ない。このような獲得免疫は脊椎動物に固有の仕組みであり、我々の先祖が魚類へ進化した時に備わったと考えられている。ご先祖様に改めて感謝である。

P.S.
一夜明け、前回と同じように、左腕接種箇所に軽い痛みが生じていた。筋肉細胞に取り込まれたmRNAの設計図に従いスパイク蛋白質が作られ、この異常を察知した私の免疫細胞が炎症物質を発しながら警戒態勢に入ったみたいだ。1回目接種で作られた中和抗体を産生する免疫B細胞工場が大量生産を始めるだろうし、1回目とは別種の中和抗体を産生するB細胞も活性化し、中和抗体産生レベルは一層高まることであろう。遠い先祖から受け継がれた巧みな仕組みが動き出したと思うとうれしくなる。