タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

自家受粉と他家受粉

 我が家の家庭菜園で、カボチャとキュウリの花が咲き、実を付け始めた。
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 写真左がカボチャ、右がキュウリである。両者ともウリ科の植物であるが、カボチャの方は雌雄異花で雌花と雄花とで別に咲き、他家受粉が必要となる。一方でキュウリの方は、一つの花の中に雄しべと雌しべがあって基本的には自家受粉となる。
 写真のカボチャは朝から雨が降り続いた日に咲いたもので、雨があがった夕方確認に行ったところ、もう花は萎み閉じていた。雨の中、昆虫たちも飛んで来なかったので、受粉に失敗した可能性が高い。因みにカボチャが受粉に失敗すると、実が大きくならないままで、やがて朽ちて落ちる。やはりカボチャは、きちんと人工授粉をして上げないといけない。
 一方でキュウリは、人工授粉という気遣い一切無しで、放っておいてもどんどん花が咲き実を付ける。ふと、『カボチャは何で雌雄異花に進化したのだろうか?』と疑問に思った。
 今まで私は『他家受粉の方が様々な遺伝子をシャッフルして子孫に伝えることができるので、多様性に富み生き残る確率が高くなる』と考えていた。しかし最近になって『同じような遺伝子を持つものばかりの集団の中では、他家受粉も自家受粉も遺伝子の多様性レベルに大差なく、望ましい遺伝子を選び抜くという観点からは、むしろ自家受粉の方が有利』という考えに変わってきた。
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 上図はメンデルの分離の法則を表している。緑を優性遺伝子、黄色を劣勢遺伝子とすれば、自家受粉(自分の遺伝子同士の掛け合わせ)をすれば、1/4の割合で劣勢遺伝子の形質(黄色の豆)が出現することを示している。つまり、自家受粉は他家受粉より劣勢遺伝が表現形質として現れ易いことになる。そして、劣勢遺伝が望ましい形質だった場合は自家受粉は望ましい受粉となり、避けるべき形質の場合は、自家受粉は「避けるべき受粉」となる。
 動物の世界で自家受粉は存在しないが、これに近いのが近親相姦である。動物は本能的に近親相姦を避けるようプログラムされているようであり、また実際、突然変異で生まれた悪性遺伝子を発現できなくする仕組みも備えている。一方で植物の方は、一つの花に雄しべと雌しべを備えて、自家受粉もお構いなしにやっているわけで、両者の違いは何だろう? と思ってしまう。
 植物は動物と違って、根から芽が出て、葉から根が生えて と自分でクローンを作って繁殖できる。自家受粉も他家受粉もどちらも可能であり、とにかく子孫は沢山作ろうと種(たね)を一杯残す。これはつまり、劣勢遺伝の出現というリスクを考えないで、とにかく可能性のあることは何でもやっておこうという戦略に見える。そういう中で「雌雄異花」に拘る理由は、「雌雄同花」より遠くの場所に子孫を残せる可能性が高いからではないだろうか。植物は自分で移動できないから、今いる環境が劣悪になったら一族郎党が全部死に絶える。雌雄異花の他家受粉で遠くに子孫が残せるなら、全滅は避けられるのである。