月について

 昨日は空一面の雲に覆われてしまい、期待していた皆既月食は見られなかった。別に私は天文ファンではないので、これが今までの働き盛りであったのなら、「その時間帯はまだ残業中」という程度にスルーしていたのだが、前期高齢者となり、高齢者優先接種の対象者となった今、「次のスーパームーン皆既月食は12年後」と言われると、『その時は生きているかどうか分からないので、折角のチャンスは全部生かしたい』という気持ちになる。
 月は今から45億年前に誕生したと考えられている。今から46億年前に太陽も地球も誕生したが、その頃の地球は小惑星や彗星が雨嵐と降り注ぎ、それらが落下した際の莫大なエネルギーで地表も火の玉のマグマオーシャンの状態であった。地球誕生から1億年が過ぎ、地表はまだ冷え切っていない中、地球の公転軌道に ”テイア”という天体が接近し始めた。因みにテイアとは、ギリシャ神話の月の女神、セレーネの母にあたり、月を作った母なる天体という意味になる。このテイヤは火星ほどのサイズの天体であり、この天体が地球に衝突した。この衝突により地球はマントルまで深くえぐられ、どろどろに溶けたマグマは宇宙空間に飛び散り、地球を周回する小天体群になった。これらの小天体群の一部は地球に落下したが、残りは引力で引き合って衝突を重ね月が誕生した。
 地球へのテイア衝突は、地球にとっては大変な災難だったのかも知れないが、後々この地球に誕生する生命にとっては、幸運をもたらす一大イベントとなった。地球にテイアが衝突した頃、地球は1日の長さが5時間ほどで高速に自転していた。ところがテイア衝突によって月ができ、この月が地球の回りを公転するようになると、地球の自転速度が月の公転速度より速いため、両者間で働く潮汐力が、地球の自転にブレーキを掛け、月の公転速度を速める力として働いた。その結果今では、地球の自転速度が1日24時間という丁度良い程度に減速し、月は回転エネルギーをもらった分、地球から離れて行って今の38万kmかなたの天体になった。もし地球が1日5時間で高速回転していたら、地表は暴風に晒され高等生物の生存には適さない星になっていたであろう。もう一つの幸運は、テイアの衝突により、地軸(自転軸)が公転面に対し23.4度傾いたことから生まれた。地軸がほど良く傾いたお陰で、各公転位置の各緯度で太陽光の入射量が異なってくることになり、結果季節が生まれた。このようにして、月は我々人類に、24時間という1日と春夏秋冬という1年を分類する節目を与えてくれた。

f:id:TatsuyaYokohori:20210527114348p:plain
 そんな感謝すべき月であるが、知らないことが沢山ある。写真は月の表側と裏側であるが、我々一般人は月の裏の顔を知らない。もし人類が古代から、月を裏の顔で眺めていたとしたら、月を女神に例えたりしなかっただろうし、セーラームーンも誕生しなかったように思える。月面で平なところを「海」と言い、この海は月がまだ熱く燃えていた頃、火山活動でマグマが流れ出し広く平に溶岩で覆い尽くした跡と考えられている。マグマの主成分は地球と同じ玄武岩であり、月の海には、伊豆大島三原山噴火で流れ出した溶岩が固まって黒く見えていると思えば良い。地球に面する表側に海が多いのは、地球と月が引き合う力が火山活動にも影響を与えたからであろうか?