田んぼでの微生物の活躍

 自宅裏の田んぼは、田植えから10日ほど過ぎた。田に水を張ってからしばらく経つと、水底の土の色がだんだん灰色に変わっていく。水を張る前の田んぼの土の中では、カビなどの微生物が我々と同じように酸素呼吸をしている。ここに水を張ると酸素が届きにくくなり、2週間ほどでカビは窒息死する。すると、酸素の代わりに硝酸、鉄、硫酸を使ってエネルギーを産み出す細菌が順次登場する。
 一か月もすれば褐色の鉄サビが溶けだし、土は灰色に変わる。土から鉄が溶けだすとイネの栄養になるリンも溶けだす。このように酸素が無い発酵の世界では、腐敗が抑えられ、最終的には酢酸発酵が進み、酢酸をメタンへ変換する時にエネルギーを得る「古細菌」という微生物が出現する。古細菌は我々動植物の祖先にあたる生物で、35億年前の酸素のない地球で進化した。田んぼの土の中では35億年の生物進化の歴史を一か月で遡る。
 このようにして、田んぼの土の中では、次々に微生物がバトンタッチし、その度に放出される窒素がイネの栄養分となる。田の水面では、今日も鴨たちが泳いでいた。

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