タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

MRIの原理

 一昨日はMRIの体験談を述べたが、今日はMRIの原理について調べてみた。まずMRIとは、Magnetic Resonance Imaging の略であり、日本語に訳せば 磁気共鳴画像 となる。この原理を理解する際、二つのキーワードがある。「磁気」と「共鳴」である。
 最初のワード「磁気」だが、この磁気についてを、高校まで学んだ物理の知識から理解するのはなかなか難しい。実際、MRI装置が発する磁気により、人間の体内の水素原子核(陽子)のスピン状態が変化するわけだが、この説明自身 もう量子力学の世界に入り込んでいるので、「そんなもの」と納得するしかない。 
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 上図はMRIの基本原理を示している。図の一番左は磁場を掛けない体内の水素原子核の状態を示しており、スピンの向きも軸の方向もバラバラである。ところが磁場を掛けるとスピンの方向が一定となり、図の左から2番目の状態に移行し歳差運動を始める。歳差運動とは、こま回しで こまが止まる直前のふらふら回る状態だと思えば良い。この歳差運動はある周波数での運動となるが、ここに電磁波を照射して、歳差運動の周波数と電磁波の周波数が一致した場合、2つ目のキーワードである「共鳴」が生じ、図の3番目の状態へ移行する。この状態で電磁波照射を止めれば元の静磁場状態に戻るが、戻る際、共鳴信号を出しながら戻る。元に戻る速さは、各組織(水・脂肪・骨・癌などなど)で独自の速さとなり、MRIはこの共鳴信号を測定し元に戻る速さを白黒の濃淡で画像化している。f:id:TatsuyaYokohori:20210509000321p:plain
 上図はMRIで傾斜磁場を掛けて脳の1断面を測定している様子を示している。この傾斜磁場により、被検者の任意の位置での磁場の強さを設定できる。上図の例で説明すれば、脳のある断面の測定において、断面を16行*16列=256区画に分けており、縦方向にも横方向にも傾斜磁場を掛けることで、256区画全てにおいて磁場の強さを変えて磁化されることを示している。歳差運動の周波数は磁場の強さに依存するため、つまり傾斜磁場を掛けることで、所定の周波数の共鳴信号がどの区画から発信されたものかを特定できることになる。MRI検査では、複数断面で傾斜磁場を掛けながら、電磁波照射のON/OFFによる水素原子の{励起、緩和、データ収集}のセットを延々と繰り返す。これが騒音の原因であり、検査時間が長く掛かる理由となる。
 MRI検査では造影剤無しでも白黒の断面画像を作成できる。造影剤を投与した場合はそれが流れる血管の凝縮個所がよりハイライトされるが、これはガン細胞が増殖中で血流が集まる個所をハイライトする効果を生む。このようにして、造影剤有りと無しと双方のMRI画像を比較することで、小さい初期ガンを精度良く見つけることができる。