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田舎の年金暮らしのたわごと

E484K変異株とE484Q変異株 同じゲノム位置で2種類の変異が起き得るのか?

 新型コロナウイルスの変異株の中で「E484K」と「E484Q」がある。E484Kについては昨年からニュースで聞いていて知っていたが、最近、二重変異株として E484Q という言葉を聞いた時、私はてっきりアナウンサーの言い間違いだと思った。しかしそうではなかった。今日のテーマは、「遺伝情報の格納場所であるRNA同じ位置で2種類の変異がどのように起きるのか?」である。
 E484Kはスパイク蛋白質アミノ酸配列の484番目の変異を表し、その位置のアミノ酸が E(グルタミン酸)から K(リシン)に置き換わったことを示している。また同じようにE484Qは、同位置のアミノ酸がE(グルタミン酸)から Q(グルタミン)に置き換わったことを示している。蛋白質は20種類のアミノ酸を大量に並べて隣接するアミノ酸同士をアミノ結合で繋いだものであるが、そのアミノ酸配列の中の一つでも変われば、その付近の蛋白質の形が変わることになる。すなわち、変異株とはスパイクの形が変わったウイルスを意味する。アミノ酸はアルファベット1文字の略号にて表されることがあり、以下参考に略号表を示す(青枠:変異前、赤枠:変異後)。
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 次にウイルスが持つ遺伝情報がどのように変異した場合、上記のようなアミノ酸置き換えが起きるかを説明する。以下は遺伝情報をアミノ酸に翻訳する変換表である。
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ウイルスの遺伝情報(RNA)は4種類の塩基(U:ウラシル、C:シトシン、A:アデニン、G:グアニン)を繋げたU,A,C,Gの文字列で表すことができるが、この文字列の中の3文字の並びをコドンと呼び、このコドンがアミノ酸を決定する。上記はコドン表であり、今回の変異前のコドンを青枠で、変異後のコドンを赤枠で示している。
 ここまでは、高校生物の教科書やネット記事に書いてあることであるが、今日はこれらの知識に基づき、新型コロナウイルスRNAがどう変化したら2種類の変異株が生まれるかを考えてみる。上のコドン表から、GAAは一文字の置き換えでAAAやCAAに変わり得るし、GAGからも同じ一文字の置き換えでAAGやCAGに変わり得ることが分かる。これらを図にまとめると以下となる。
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この図により、新型コロナウイルスRNAの中のスパイク蛋白質をコーディングする484番目コドンの第1文字である G(グアニン)が A(アデニン)に変異した場合 E484K変異となり、G(グアニン)が C(シトシン)に変異した場合 E484Q変異となることが分かる。この図には2つのタイプが書かれているが、実際はタイプ1なのかタイプ2なのか、それとも実際2タイプ存在するかは筆者には分からない。
 次に、同じゲノム位置に変異が集中するのが偶然か否かを考えてみる。以下の図はあくまでも私の想像であり、エビデンスは全くないことを最初に断っておく。
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今までニュースになった変異株の情報から、変異はアミノ酸配列の400番台~600番台で起きていることが分かる。蛋白質アミノ酸を繋げたものという説明は既にしているが、そのアミノ酸の鎖をどのように折り畳むとスパイクの形になるかを考えたら上図になった。このように考えた理由は、スパイクが最初に人の細胞の受容体にコンタクトする位置が感染力の高低を決めるホットスポットになるから、それらはスパイクの頂点付近にあるに違いないと考えたからである。そしてこの頂点付近は、ウイルスにとっては侵入武器装備拠点に、人間(抗体)にとってはバリア設置対象拠点になる。
 このように考えると、変異がアミノ酸配列の400番台~600番台で起きている理由は、「そこで起きた変異が感染力を左右するからニュースになっているだけで、その他の位置でも変異は起きているがニュースになってないだけ」と解釈できる。ただ、484番目が特別の位置にあるのか否かは分からない。