タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ウイルスの毒性

 ウイルスは弱毒化し宿主と共生する方向で進化すると言われている。ただ「弱毒化」と言われた場合、「それじゃウイルスはどんな毒を持っているのだろう?」と疑問になる。どうも、細菌類とウイルスでは「毒性」という意味が違うように思える。
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 上表は毒素がどのように働いて病原性を発揮するかの例であるが、細菌は生物であり独力で毒素物質を生成できることから、その生成物の性質である「毒性」という言葉は適切な使い方だと言える。ところがウイルスというものは、それ単体では何もできない。しかも、このウイルスが細胞に感染して産み出すものは毒素ではなくウイルスのコピーである。
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 上表は主なウイルスの症状例であり致死率が高い順に並べてある。ウイルスは多くの細胞に感染し細胞や臓器を機能不全に陥らせることで病原性を発揮する。インフルエンザは上気道を越えて肺まで侵入し感染を広げることは少ない。よって致死率は低い。一方でエボラウイルスは多臓器に転移して感染範囲を広げ、多臓器不全を引き起こすから致死率が高い。ここで仮に「致死率が高いものが毒性が高い」と定義したとしよう。その場合の毒性は「多臓器への転移感染能力と転移スピード」と定義できるのではないだろうか。そしてその場合の弱毒化とは、転移できる対象臓器が制限されるか、あるいは転移スピードが遅くなる と推測される。
 新型コロナウイルスは上気道を越えて肺や血管まで感染範囲を広げることがあるので怖れられている。ただSARSに比べて十分弱毒化していて、「宿主を滅ぼしてしまい自分の存続が危ぶまれる」というほどの毒性は持っていない。ウイルスの弱毒化とは進化の方向性を示すものだが、1,2年という短いスパンで新型コロナウイルスが弱毒化するかは大いに疑問である。