タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

ダーウィンの進化論は間違いか?

 最近読んでいる本に『ダーウィンの「進化論」は間違いでラマルクの「用不用説」が正しい』と書いてあった。ダーウィンの方が正しいことで決着が付いていたと思っていた私にとって、これは驚きの主張である。
 ダーウィンの進化論のベースにあるのは「自然選択」と「突然変異」である。現在流行っている新型コロナウイルスも「突然変異」により感染力がアップし、感染力が高いウイルス株が「自然選択」によりメジャーな株として残り感染し続けることになるので、これは正にダーウィンの進化論が正しいことを証明しているように思える。ただし、この本の筆者の主張は、そんなウイルスや細菌レベルの進化ではなく、脊椎動物の進化に対するものである。
 進化論では、キリンの首を例として説明されることが多い。ダーウィンの進化論に従えば、「突然変異により首が少し長くなったキリンが生まれ、そんなキリンが高い木の葉を食べることができたため、他より生き残る確率が高かった。この小さい変化が何世代も続き、キリンの首は非常に長くなった」となる。ところが、この説明には無理がある。首の長さを伸ばす遺伝子が突然できたとしても、その突然変異が生じるのは1個体であり、4代ほど交配を重ねれば、その特異な遺伝子も膨大な標準ゲノムの海で希釈されてしまい首の長い集団として残らないのである。またもし、首の長さを少しではなく、非常に長くする遺伝子が突然変異でできたとしたら、それは奇形児の誕生を意味し、自然選択で残る方ではなく排除される方となるので、これまたダーウィン進化論の不備を示すことになる。
 確かに、突然変異は遺伝子レベル、分子レベルで起きる現象であり、その現象を脊椎動物の形態変化に結び付けるには無理があるように思える。
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 上はホヤの発生過程であり、ホヤは受精後の卵割発生から成体になる過程で一旦オタマジャクシの姿(オタマジャクシ幼生(上図⑨))となる。海中の岩に固着しながら貝のような殻をまとい生きるホヤの幼生が、魚のように泳ぎ回るとは想像できないが、個体発生は系統発生を繰り返すという法則に基づけば、このオタマジャクシ幼生のホヤは、昔、脊椎動物(魚)と ホヤの共通の祖先がいたことを意味している。
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 上は、遺伝子レベルでのホヤと人とハエの比較であるが、ホヤと人ではおよそ8割の遺伝子が共通であることが分かる。これは、脊椎動物の形態変化は遺伝子の変異により起きるものではない ということを示している。つまり、基本的な遺伝子は脊椎動物の祖先が出現した太古の時代にもう8割がた揃っていたのである。そしてその後の進化の過程で突然変異により新たに出現した遺伝子は2割程度であり、それらは形態変化のためのものではなく、免疫系(獲得免疫系)の遺伝子が大半なのである。
 それでは進化(形態の変化)を引き起こすものは何であろうか? 答えは「環境変化」となる。魚類が水中にいる間 血圧は15mmHgであるが、これは人間の胎児が羊水中にいる時の血圧と同じである。この胎児が破水して生まれ落ちた時に血圧は30mmHgに上がるが、これは進化の過程で水中から陸に上がった魚類の血圧と同じと考えられる。この血圧変化を起こさせるものは重力であり、この水中から陸へ上がる環境変化時の重力加速度の変化が形態変化を引き起こす原動力になる。また陸に上がる過程で酸素濃度が格段に上がる。そしてこの酸素濃度上昇および水棲呼吸から陸棲呼吸の変化により、水棲呼吸筋が陸棲呼吸筋に変化し、エラ呼吸から肺呼吸へ変化することになる。
 ここにおいて、環境変化は遺伝子を変化させる因子としては働かない。遺伝子は変わらないまま、環境変化は眠っている遺伝子を発現したり、働いている遺伝子を休眠させたりするのである。そしてこの環境変化は、その環境にいる個体集団全体に働く力となり、すなわち進化を推進する力となる。脊椎動物の進化はこのように進むのである。