タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

mRNAワクチン

 本日のテーマはmRNAワクチン(メッセンジャーアールエヌエーワクチン)である。新型コロナウイルス感染症に対するワクチンとしてファイザー社やモデルナ社が開発したワクチンはmRNAワクチンと言われている。これがどんなワクチンかを理解するためには、mRNAとは何かが分かっていないといけない。DNAやmRNAは高校生物での学習項目となっているが、今一度復習してみたい。
 最初に、遺伝情報は「DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質」の順に伝達されるという分子生物学の概念(セントラルドグマ)を復習する。まずRNAポリメラーゼの働きによりDNA(2本鎖)の遺伝情報がmRNA(一本鎖)へ転写される。

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 上図はmRNAへ転写された遺伝情報(設計図)を使いタンパク質がどのように合成されるかを示している。今日の本題へ話を戻せば、mRNAとは、タンパク質合成に使用される遺伝情報と言える。一方で新型コロナウイルスはRNAウイルスであり、mRNAを脂質のエンベロープで包み表面に細胞侵入用のスパイクを付けた物質だと言える。
 私は昨年4月の緊急事態宣言時に、新型コロナウイルスに対してどんなワクチン開発が考えられるかを夢想したことがある。その時のアイデアは「ウイルスのスパイクタンパク質を作るRNA部分を大腸菌に注入してスパイクタンパク質を大量生産すれば、それがそのままワクチンになる」というものだったが、このmRNAワクチンのような発想は全く無かった。抗体はタンパク質に対し産生されるがRNAに対しては産生されないと思っていたからである。
 このmRNAワクチンは、そんな異端のアイデアが現実となった画期的なものである。「mRNAを体内へ注入すれば、スパイクタンパク質は体内が作ってくれる」普通そんな発想はないのである。ただ、この手法でのワクチン開発は昨年2月の時点で既に始まっていたと言われており、その時点でもう、研究開発のフェーズを終え量産開発のフェーズに移行していたものと思われる。このワクチン開発の領域では米英と中国が先行しており、一方で日本の影は薄い。何とか頑張って欲しいものだ。