タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

おせち配布

 今年は新型コロナウイルスの出現により、町内行事がことごとく中止になった。新年会も中止となり町内会予算が余ってきたので、おせちを配ることになった。27(日)と30(水)の2回に分けて都合の良い方の日に、公民館までおせち折詰を取りに来てもらった。私は町内会役員として折詰渡しを担当した。
 27日に公民館を開けて申し込み客を待っている時、一人のおばあちゃんがやってきて、「今年はおせちを配るのですか。そんなの初めて。私ももらえるのですか? 何か申し込みが必要なの?」と尋ねられたので、主旨を説明してお名前を確認し、27日ではなく30日の方に希望されていることが分かった。そのおばあちゃんは町内回覧板の申し込み用紙に自分が書いた自分の名前を確認して、「何か書くものない? 最近忘れっぽいから何かに書いておかないと」と言われたので、メモ用紙から1枚剥がして渡した。おばあちゃんはその紙切れに『30日、15:00-18:00』と書いて立ち去った。立ち去り際、「30日にも公民館を開けていますので是非取りに来てくださいね」と念を押した。おばあちゃんは、自分が30日に申し込んだことをすっかり忘れていた。
 30日当日は冬型の気圧配置で、15時ぐらいから雨が雪に変わった。そしてそのおばあちゃんは17時を過ぎてもおせちを取りに来なかった。受け渡し時間が残り少なくなって町内会長が「あのばあちゃん、ワシ良く知っているから届けて来る」と言っておせちを届けに行った。しばらくして帰って来た会長は「いやぁびっくりだよ。『3時からずっと玄関でおせちが来るのを待っていた』と言われてしまった。あのばあちゃん、昔は学校の先生をしとられたんだが」と言って苦笑いをされた。
 人間誰しも老いて行く。そして老いて行く時はどこか最初にダメになるところがある。このおばあちゃんの場合、他の臓器はちゃんと機能しているのに、脳の海馬が最初に限界に達し最近のエピソード記憶ができなくなったものと思われる。菅首相は「自助、共助、公助」と言っているが、この一人暮らしのおばあちゃんを共助でどれくらい助けられるかは疑問である。