タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

新型コロナウイルス変異種

 今日は冬至である。12/4ブログに書いたが、今日は昼の長さが1年で一番短い日であるが、日の入が一番早い日ではない。実際今日の日の入は12月初旬より3分半ほど遅くなっている。
 さて話は変わるが、英ジョンソン首相は19日、感染力が従来のものより最大で7割高いとみられる変異種の新型コロナウイルスが広がっているとして、首都ロンドンを含むイングランド南東部に事実上のロックダウン(都市封鎖)を再導入することを発表した。今日のテーマは、この「新型コロナウイルス変異種」についてである。
 12/11ブログで説明したが、ここまで欧米で流行していたウイルスは、武漢型ウイルスに対し、スパイク蛋白質アミノ酸配列で614番目がアスパラギン酸からグリシンに変異したものであり、この変異(D614G)により感染力が5倍程度にアップしたとしている論文もある。このウイルスは3月から猛威を振るっており、今全世界で一番流行しているウイルスである。英国首相の発表は、このD614G種に対して英国においてそのマイナチェンジ版が出たと言うことを意味している。まず、感染率が最大で70%アップしているとはどの程度のものかを考えてみる。
 欧州で3月から感染爆発したD614G種であるが、実験により、感染力が5倍になったとする論文がある。感染力が5倍となったと結論付けた実験とはどんな実験だったのであろうか? これはあくまでも想像だが、実験としては以下の2つが考えられる。
 ① ウイルス濃度が等しい環境において、暴露時間が 従来種1:新種5の比率で暴露実験をした結果、双方の感染率が同程度だった(例えば、武漢型が50分の暴露時間、欧州型が10分の暴露時間で実験した結果、双方同程度の感染だった)
 ② ウイルス濃度が新種1:従来種5の環境下に一定時間暴露実験をした結果、双方の感染率が同程度だった
とにかく感染力が5倍違えば、感染力が高い方のウイルスが短時間でメジャーなウイルスとなり、感染シェアでトップのウイルスに躍り出ることは容易に想像できる。一方で、英国首相の発表は感染力が70%程度のアップであることから、それはそれで十分驚異ではあるが、3月当時の爆発的感染力のアップまでには行かないものと想像できる。
 次に、この変異ウイルスの感染力以外の特性について考えてみる。12/10ブログでも説明したが、新型コロナウイルスが恐い理由の一つは、このウイルスが上気道を越えて身体の深部まで感染する能力を持っている点である。この身体深部への感染力を助けている能力がもう一つあり、それはこのウイルスの隠密性(ステルス性)である。一般に細胞がウイルス感染に遭うと、免疫系に警告信号を発するのだが、このウイルスはその警告信号を抑制する能力を持っている。これらの能力により、インフルエンザと比べて繁殖スピードにおいて極めてノロマなこのウイルスに、重症化能力を持つ恐い側面が出てくる。問題は、英国で変異したウイルスが、致死率や重症化率においてもより恐い存在になっているか? という点である。答えとしては、その可能性は極めてゼロに近いと言える。何故ならば、新型コロナウイルスの変異は12/11ブログでも説明したが、インフルエンザウイルスのような抗原シフトによる大規模変異を引き起こす能力がなく、よって極めて漸進的であり、スパイク蛋白質に起きる感染力アップ変異とその他の領域に起きる重症化率アップ変異が同時に生じる可能性は限りなくゼロに近いからである。
 最後に、この変異ウイルスに対するワクチンの効き目について考える。感染力のアップはウイルス突起であるスパイク蛋白質の幾何的構造の変化を意味するが、ワクチンの効き目も正にこのスパイク蛋白質の変化に大きく依存する。今回は感染力70%程度の変化であるから、ワクチンが全く効かなくなるほどの変化ではないが、ワクチンの有効率が落ちることは間違いない。