タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

アビガンの有効性

 新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待されているアビガンだが、「有効性を判断するのは困難」との国の審査報告書がまとまったとニュースが流れた。実に残念なことである。理由の一つとして治験のやり方が、「二重盲検」ではなく「単盲検」であったことが上げられている。二重盲検とは医師にも患者にも知らせず偽薬投与の対照試験を行い確認する方法であり、一方で単盲検の方は患者には知らせないが医師は偽薬と分かっている確認方法である。当然ながら単盲検の方は医師のバイアスが入る余地がある。
 ワクチンの有効性確認では、二重盲検にて試験を行う必要がない。感染したか否かに医師の判断が入らないからである。一方でアビガンの有効性は、「投与で治癒が何日早まったか」という風に示されるものなので、そこに医師の判断が入る余地が出てくる。
 アビガンの有効性確認が難しい点はもう一つある。それは、アビガンが感染初期に効果を発揮する薬であり、感染後期で投与された場合効果が非常に見えにくい薬であるからだ。

f:id:TatsuyaYokohori:20201217134359p:plain
 上図はアビガンの作用メカニズムを説明しているが、アビガンには感染後のウイルスの増殖を抑制する効果がある。これと同じようにウイルスの増殖を抑制する薬としてレムデシビルがある。レムデシビルの方は日本でも新型コロナウイルス感染症薬として承認されているが、WHOは「大規模な治験の結果新型コロナウイルスに対する効果がなかった」との暫定的な研究結果を発表している。
 新型コロナウイルスは感染から4,5日の潜伏期間を経て発症するが、実を言うとアビガンやレムデシビルは、この潜伏期間に投与されれば一番効果を発揮する薬となる。もちろん、発症して直ぐに投与された場合ならウイルス増殖抑制の効果を発揮するわけだが、重症者に投与してもほとんど効果は見込めない。この理由は、この病気の特質から来ている。重症者はウイルスと戦っているわけではない。戦っている相手はサイトカインストームや肺胞硬化、あるいはできてしまった血栓であり、これらには「ウイルス増殖阻害薬」は全く効かないのである。現時点でレムデシビルは、厚労省診療の手引きには「原則として重症患者に投与する」と書かれている。穿った見方をすれば、これは「レムデシビルは使うな」と暗に言っているように思える。
 私としては、アビガンの治験をやり直し有効性を証明してもらいたい。アビガンは新型コロナウイルス用として開発された薬ではない、元々インフルエンザ治療薬として開発された薬である。将来、新型インフルエンザでパンデミックが起こり、タミフルリレンザも効かない状況となった時、最後の切り札になるのがアビガンしかないからだ。