タテよこ斜め縦横無尽

田舎の年金暮らしのたわごと

新型コロナウイルス再考(その1)

 新型コロナウイルスがなかなか沈静化しないが、ここらで一度再考してみる。再考のポイントはウイルスの正体についてである。世の中、感染症の状況については、うるさいほど言い尽くされているようだが、一方でウイルス自身の特質についてはあまり紹介されていない。研究者はコメンテータとは違い、論文的な、すなわち確かなエビデンスが無いものに関しては発言しないので、「新型コロナウイルスはこんなウイルスです」というような記事が少ないのだと想像する。今日は研究者ではない気楽な立場で思い付きの考えを述べてみる。
<インフルエンザウイルスとの違い>
 新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと比べてはるかに弱毒である。しかしながら、インフルエンザウイルスが主に上気道に感染するのに対し、新型コロナウイルスは上気道以外に気管支や肺、舌、血管、その他の臓器まで広く感染範囲を広げることができる。新型コロナウイルスが恐れられる理由はまずこの点にある。

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 インフルエンザウイルスはウイルス表面のスパイク(HA:ヘマグルチニン、図中ピンク突起)が開裂し(図中、ピンクと青に分離)上気道細胞の受容体(図中、シアル酸レセプタ)と結合することで感染が始まる。感染の鍵穴となるシアル酸レセプタは上気道以外の細胞にも存在するが、HAの開裂を助けるプロテアーゼが人間の場合上気道にしか無いため、人インフルエンザは上気道を越えて肺まで感染を広げることは稀である。
 一方新型コロナウイルスは12/3ブログで示したように、スパイクタンパク質がACE2受容体に結合して感染が始まる。ACE2受容体は体中のどの細胞にも存在するため、感染が上気道を越えて体の深部まで進むことになる。
 ウイルスと免疫との戦いを戦争に例えるなら、インフルエンザウイルスは重装備の海兵隊がやってきて、あっと言う間に島礁を占拠されてしまう という感じになる。ダメージは大きいが本土は安泰であり、本土からの軍隊の派遣でもって占拠された島礁を奪還することができる。
 一方新型コロナウイルスの方は、小型木造船で隠密裏に襲来する工作員のような感じになる。海上保安庁を含めた警察力(免疫)がしっかりしている国であれば水際で阻止できるが、そうでない国の場合、本土深くまで侵入されてしまい最悪首都まで占拠され降参することになる。
 よく「正しく恐れること」と言われるが、まず敵を正しく理解することが重要だと思う次第である。